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求人広告会社が国産シルクに挑戦!?熊本「やまがシルク」島田さんを取材!

求人広告会社が国産シルクに挑戦!?熊本「やまがシルク」島田さんを取材!
求人広告会社が国産シルクに挑戦!?熊本「やまがシルク」島田さんを取材!
工場・職人紹介
小林 正樹
こんにちは。熊本本店の小林です。(兼お笑い担当です)

2020年3月に発売するや否や大人気アイテムになった「ベーシックTシャツ(シルクプロテイン加工)」。富山県のレディースカットソー工場「TFC」が作るこのカットソーは、何と言っても生地のハリ感と優しい光沢が魅力。このハリ感や光沢はどこから生まれているのか・・・。

それが「シルクプロテイン加工」です!
この加工は、熊本県にある国産シルク工場「やまがシルク」のシルクを使っていて、洋服にこのシルクを配合するのは業界初!そしてこのシルク作りの裏には、熱い熱い想いが詰まっているんです。

今回は、そんなやまがシルクを作る、「あつまるホールディングスNSP山鹿工場」の専務取締役・島田裕太さんにインタビューしてきましたよ。
世界一位だった日本の生糸産業。
今では・・・
シルク(絹)と聞くと、多くの方はスカーフなどの衣料品を想像されると思います。シルクとは蚕の繭から作られる繊維のこと。明治時代以降、生糸や蚕種(蚕の卵)が輸出品として急速に伸び、外貨獲得の主役として日本の経済に大きく貢献してきました。1900年代頭には日本の生糸生産量は世界一を誇っていたほどです。

しかしながら今現在、国産のシルクはどうなっているかご存知ですか?
ピーク時には全国で220万戸もあったという養蚕農家。いま日本で最も養蚕農家数が多い群馬県でも十数軒ほどしかなく、平均年齢は75歳~80歳。そのうち後継者がいるのが一軒と聞きます。

国産のシルクは滅亡寸前なのです。
異例!求人広告会社が
国産シルク業界にチャレンジ
そんな未来に立ち向かっているのが、熊本県山鹿市にある「あつまるホールディングス」専務取締役・島田裕太さん。
世界初となる大規模な無菌養蚕工場を作り、そこで生まれる「やまがシルク」は衣料品だけでなく、さまざまな可能性を秘めていると世界が注目しています。
ゼロからのスタート
日本のシルクを復活させたい
熊本市内から車で一時間ほど北に上った山鹿市にある「あつまるホールディングスNSP山鹿工場」。ここに世界で唯一の、桑葉の栽培・加工から繭の生産まで一貫している無菌養蚕工場があります。
熊本に来てまだ1年の私でさえ、「あつまるホールディングス」さんが熊本で大手の求人広告会社というのは知っています!テレビCMもよく拝見しております(笑)。なので、まさか「やまがシルク」を貴社がやっているとは思いもよりませんでした。
そうですね。私たちの本業は求人広告会社。養蚕業とはまったく縁のない会社でした。それが2014年の4月に先代の社長(父)が地域に還元できる新規事業として、無菌シルクを作ろうと言い出したことがすべての始まりでなんです。
なかなかのチャレンジですよね。全く違う業界ですし。想像もつかない苦労があったとは思いますが、その前に「熊本県山鹿市」は蚕を育てるのに適している場所なんですが?
はい、そもそも蚕は病気に弱いんです。さらに農薬がついた桑の葉を食べると死んでしまうほどとても繊細な生き物。
へぇ~!知りませんでした。繊細過ぎますね。
たとえ桑を無農薬で育てたとしても、近隣の畑が農薬を使えば少なからず影響を受けてしまいます。なので、安心して桑を育てられる栽培用地を県内で探し求めていたとき紹介などによって出会ったのが、山鹿市でした。
今回の取材で山鹿には初めて来ましたが、自然豊かな場所ですよね。
偶然出会った場所の山鹿市ですが、色々調べていくとおもしろいことがわかったんです。
おもしろいこと?
実は、九州地方における養蚕の開祖と言われる長野濬平(しゅんぺい)氏の出身地が山鹿で、熊本県内でも特に養蚕が盛んに行われていた地域だったんです。
なんと!!
すごい偶然でしょ(笑)。しかも「蚕神社」というのもあるくらいなんです。そこまで山鹿市が養蚕と深い関わりがあったとは・・・。ふたを開けてみて驚きましたね。
(ちなみに、昔は熊本県内に養蚕農家は68,000軒もあったそう。ただ現在山鹿市に今は2軒ほどしかないんだとか)
「ここで蚕を育てなさい」という神様のお告げのような話ですね(笑)。とはいえ、全く初めての挑戦じゃないですか。社内外から相当反発や反対があったと思いますが・・・。
はい・・・。新規事業を一人で任されましたが農業に関してはまったくの素人。なので、いろんな人の話を聞きました。理解してもらえる人もいる中で、「今さら衰退したものをなんでやるんだ」など悲観的なことを言われることも多かったですね。
悲観的とはどういう内容ですか?
今までの養蚕方法では、餌となる桑の葉が収穫できる春から秋にカイコを飼育するため、繭は年に3回ほどしか生産できません。
(年に3回だけ!?それさえ知らかったぞ・・・)
それに対し、うちが挑戦しようとしていたのは人工飼料を与え、一年を通して蚕を飼育するというやり方です。糸の専門家からは、桑と人工飼料とでは品質が違う、とかそもそも本物じゃないとか厳しいことも言われました。
思い切って振り切る
中途半端が一番よくない
これまでと同じようにやっていてはシルク産業の復活はありえないですもんね。とはいえ、この事業を一人で押し進めるうえで、モチベ―ションを保つのは大変だったんじゃないですか?
今までにシルクとか繊維ものをやってきていたら余計な知恵がついていたと思いますが、ゼロからのスタートだったのがよかったのかもしれません。
ゼロからのスタートだからこそよかった・・・?
はい、知識があって批判的なことを言われていたらムカついていたと思いますが(笑)、知らないからこそいろいろな話を吸収できたのがよかったと思います。そんなに知らないなら教えてあげるよっていう感じで。もちろん悲観される話もあれば賛同してくれる話もあったので、モチベーションは下がりませんでしたね。
“とはいえ”ばかり言って申し訳ないのですが、とはいえですよ(笑)、工場や畑の総工費が23億円もかかったと聞きましたし、先がはっきりと見えない事業にここまでの資金を投じることに迷いは生じなかったんですか?
いえ、正直、予算を半分にして本業のシステムに充てた方がいいんじゃないかと先代に言ったことはあります。しかしそうしたら、『馬鹿野郎、決まったんだから気にせず進め』と厳しく言われまして。
中途半端にやるな!と。
そうです。でもそれは正しかったと思いますね。
その言葉の通り中途半端にせず、工場自体もしっかり大規模にしたことで、最初は悲観的に見ていた人も工場視察に来てくださったり、変化が見られるようになりました。桑から工場まで一貫してやっているのは世界でここだけです。課題はありますが、本業と離れて自分たちで稼いで、自分たちでやっていけるように取り組んでいきたいですね。
世界で唯一の無菌養蚕工場が誕生。
蚕のために東京ドーム6個分の畑を用意
まだ始まったばかりだと思いますが、実際、工場を建設して稼働させてみて何か変化はあります?
知れば知るほどシルクの可能性を感じてます。しかしながら最初は本当にいろいろトラブルも起きました。
蚕が育たない、とかでしょうか?
そうですね、まずは工場や桑畑のお話をすると、構想から3年後の2017年4月、総工費約23億円をかけて世界でも類を見ない、無菌養蚕工場を竣工しました。また、餌となる桑を育てるための桑畑「天空桑園」は、東京ドーム6個分の広さで標高600mという周囲からの影響を受けない場所にあります。
東京ドーム6個分!蚕の餌のためだけの土地・・・なんだか贅沢ですね。
蚕はとても病気に弱い生き物なので、クリーンルームで飼育しています。桑も完全にオーガニックでないといけないので、鶏糞を使い、除草剤は使わずに雑草は自分たちの手でとって。それを採取して、粉体状にしたものを脱脂大豆などと混ぜて飼料を作ります。
こういう人口飼料自体は30年ほど前からあって、繊細な蚕が普通の空間でも育てられるよう防腐剤や抗生物質が入っています。でもうちの場合は、そういうものは一切入れていないので、クリーンルームから出すとすぐに腐ってしまうんですよ。蚕自身にも優しいと思います。
そこまでオーガニックにこだわってるんですね。やはり蚕にとっては幸せなご馳走ですね!
卵から幼虫、蚕になるまで
成功率50%という現実
トラブルのお話をすると、最初の頃は、蚕の成長がうまくいきませんでした。病気の汚染ではなく、100飼育しても50ほどしか繭にならないんです。餌に埋もれて死んじゃうのか、空調が問題なのか、餌の固さのせいなのか、試行錯誤です。3年経った今、ようやく96%くらいまでに落ち着いてきました。
50%から96%になるのは驚きですね。業界的にも驚かれたんじゃないですか?
蚕を大規模に飼育できることが証明できましたし、それは蚕の研究者たちも驚いていましたね。ただ、やるからには最高品質を目指したい。やっと最高ランクとされるA6のものができましたが、安定的に供給できるようにしたいです。
A6ランク!シルクにもグレードがある、ということを先日知りましたが、やまがシルクのシルクは最高品質を獲得してるんですね。いまシルクの産地としては中国とブラジルが世界のトップをいっていると聞きましたが、日本産の最高品質シルクが世界の名だたるブランドから声がかかるのを早く見たいです。
やまがシルクを
世界に向けて発信したい
そうですね。そういう意味では最近“糸”としてのシルクを自分たちで作れるようにしよう、ということで、新たに繭から糸にする機械を導入し、試運転が早くも始まっています。
蚕が繭を作ることさえできればシルク糸を作ることは簡単だと思いましたが、そんな簡単ではないんでしょうか?
糸作りも簡単ではなく試行錯誤の連続ですが、そもそも糸として販売すること自体も簡単ではない、というのがわかってきました。糸にしてどんどん売っていくというのは最初考えていたことですけど、川上の原料にどんなに付加価値をつけても末端価格の10倍で売れるわけではありません。
中国やブラジル産のシルクの量が圧倒的に多すぎて、まだまだ価格面でも難しいということですね。
そうです。そこで今やっているチャンレジが、糸を作る以外にもうちのシルクでほかに何かできないかということ。
糸以外のチャレンジ。
はい。化学検査を行ったところ、一般的な養蚕繭に比べるとうちのシルクは保湿性が高いことが分かりました。また、蚕を研究している先生に出会うことで、繊維だけじゃないシルクの用途が見えてきています。
やまがシルクは保湿性が高い!シルクが保湿性が高いということは実はあまり知られていないような気もしますね。
ファクトリエさんの「ベーシックTシャツ」に使われている「シルクプロテイン加工」がまさにそれです。人に優しく、環境にも優しいオーガニックな「やまがシルク」を糸として提供することが難しいならパウダーにしてみては?そんな業界初の取り組みから誕生した加工です。
パウダー状、ですか?
そうです。従来だとシルクからタンパク質を抽出したものを加工材に混ぜますが、今回は繭をパウダー状にしたものを加工材に混ぜて使用しています。
繭をパウダー状にするということですね。保湿性もあるTシャツというのはそういう理由からなんですね。ちなみに、繊維だけではない用途というのは具体的に何ですか?
人肌と同じタンパク質でできているシルクは、化粧品や食品など大きな可能性を秘めているんです。ちなみに海外の医療系ベンチャー企業から声がかかっているんですよ。
化粧品や医療現場にシルク・・ですか。医療の分野にシルクが使われるというのはイメージがまだわきませんが、これからのニュースに期待ですね。
ぜひ楽しみにしていてください!
山鹿の発展にもしっかり寄与したい
最後にメッセージをお願いします!
そうですね。うちで働く社員の8割が地元の人です。桑畑に関しては全員、山鹿市の人です。山鹿と社名がついているくらいですから、地元の人も期待してくださっています。だからこそ事業をちゃんと軌道にのせて、山鹿という名前を全国や海外に発信していきたいですね。そうすることで人を定着させ、住む人を増やたらいいなと思います。
島田さん、今日はありがとうございました!
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小林 正樹
お笑い担当としてファクトリエに笑いを届けています。メルマガや商品ページの文章作り、熊本本店の店長でもあります!熊本にいるからこそ九州の工場さんに会いに行って直接お話を聞いたり、現場からしか伝えられない熱さをお届けしています!