- 近藤 麻理恵(片づけコンサルタント)× 山田敏夫(ファクトリエ代表)
山田:
こんにちは、今日はよろしくお願い致します。
2019年の年末に冬休みの宿題として、僕が会社のメンバーに出した課題図書がこんまりさんの本でした。
-モノが増えて豊かになっているはずなのに、幸福度は下がっている
-マインドフルネスやヨガが流行っているのに、心が落ち着かない
この本に書かれているのは、自分の身の回りが片づいていること、つまり、ときめくモノと生活している「心の状態」こそが大切で、モノがあるだけでは幸せになれないと書かれていました。
また、2019年に放送されたNetflix「人生がときめく片づけの魔法」では、全8話を通し、さまざまな世代、人種、家庭の問題が、片づけによって解決されていく感動のストーリーを観られます。何度も観て、片づけは人生を豊かにするんだ、と実感しました。
片づけの一環で推奨されている、「自分にとってときめくモノかを、手に取って確認すること」は、まさに自分自身に”語れるか”の確認作業であり、同じ未来を目指していることに共感しています。
近藤さん(以下敬称略):
ありがとうございます。
山田:
残すモノを「ときめくかどうか」の基準で選ぶ「こんまり®メソッド」を独自に生み出し、片づけによってたくさんの方の人生を変えてきたこんまりさん。今回、商品開発をされた背景にはどのようなモノがあるのでしょうか?
近藤:
アメリカで暮らすようになってから日本のモノのよさをより感じるようになりました。日本製のモノや日本で買ったモノが使いやすくて、こちらでもずっと愛用しているんです。そういう日本のモノづくりを大切にされているファクトリエさんの考え方がとても好きだったんです。
山田:
こんまりさんから作りたいと相談いただいたアイテムは、衣装カバーと皿カバーの2つでした。珍しいアイテムだなと思ったのですが、なぜこのアイテムを作ろうと思ったのですか?
近藤:
「片づけが終わった後に ”もっとときめく暮らしをしたい”と思われているお客様から、こういう商品があったらいいのに、という声をいただくことがあります。
収納グッズなどおすすめのモノをご紹介することもあるのですが、衣装カバーに関しては『これ!』と自信を持っておすすめできるモノがありませんでした。いろいろなモノを試してはみたのですが、素材が重かったり、使いづらかったり…
そんななかで『ときめくモノがほしい!』と私自身も思っていたんです。
山田:
なるほど。お客様の声から生まれたアイテムなんですね。こだわりのポイントなどありますか?
近藤:
さわったときのときめき感っていうのが、とても大事なので、まずは「触感」にこだわりました。すごく手触りって大事なんです。毎回ときめくかは、触れて比べるしか選べないですし。ですので、触り心地から入り、見た目、そして作っている人の気が伝わる。触れたときに、きめ細やかなときめき感があります。
山田:
まずは触れた時の感覚が大切なんですね。
近藤:
そうですね。関わっている人、作っているチーム全員がときめいて作ったんだろうなと感じます。今も触れてますが、触れていて気が上がる。
伝えにくいんですが、、笑
山田:
素材にもこだわりがありますか?
近藤:
はい、できるだけ軽く、天然素材にこだわりました。
クローゼットを開けると、洋服が苦しそうだなと感じたんですね。自分がときめくモノにとって心地いい状態か?を大切にして作りました。モノを使っていないとき(休んでいるとき)の状態がいいか?は大切だと思っていて、引き出しやハンガーに収納された洋服がいい状態だと、着ている間の自分の気も上がるし、守られている感覚があるといつも思っているんです。
山田:
ときめくモノの休んでいる状態も気にされるんですね
近藤:
いかに洋服を心地よい状態で休ませてあげるか。それが、「モノと人」が、良い関係を作るときにすごく大事な観点だと思っています。
山田:
生地の質感ひとつとっても、色、風合い、厚さで熱く議論しましたよね。
-生地が厚ければ高級感や重厚感はでますが、どうしても重くなる
-逆に生地が薄ければ軽いのですが、どうしてもシワになりやすくなる
最終的には帆布の老舗工場さんに生地を作っていただき、特別な生地が織り上がりました。
山田:
お皿カバーを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
近藤:
お皿カバーはアメリカで出会った商品で、日本では全く見たことがなかったのですが、使用してみるととても使い勝手のよかったアイテムのひとつです。
日本人では馴染みがないのですが、すごく使いやすいんです。飲みかけの飲み物にちょっとカバーするだけで、見た目が可愛い。料理を置いておくときなど、キッチンがすごくときめく感じになります。
食品用のラップをよく使っていたんですが、アメリカのエコ商品にたくさんふれるようになり、プラスチックのラップを使わないようにしようという意識に変わりました。
ちょうど打ち合わせでそのお話したところ、衣装カバーを作ったときの残った端切れで作ってみたらというご提案をいただけて。ぜひ作りたい!と思ったんです。
山田:
お皿カバーが作れるってなったとき、とってもときめいてましたもんね。
近藤:
シンプルなアイテムだけど、端切れとはいえ、とても贅沢。
コップ、ボウル、お皿など日々使い分けています。
山田:
素材や仕様などの細かい部分の調整を重ねながら、商品がまさに完成しましたが、どんなお気持ちですか?
近藤:
出来上がった商品はどれも、ときめきを感じています。洋服をかけるとか、食品にラップをかけるとか、ちょっとした動作ひとつひとつにときめきが加わったらいいなと思って作ったアイテムです。片づけが終わってもっとときめく暮らしがしたいという方、そして片づけ途中の方でも、毎日をときめかせたいという方にぜひ使っていただきたいです。
山田:
生活をときめくモノにする、きっかけになるといいですね。
近藤:
毎日に、小さいモノを少しずつでもいいから、ときめくモノに変えていくことは大切だと思ってます。小さな変化を積み重ねることで、「ときめくってこういうモノなんだ」っていう経験が大切だと思っています。
近藤:
もしかしたら、衣装カバーってなくてもいいモノかもしれないし、全部をこれにしなくてもいいと思ってるんです。でも、一個変えてみると、その経験の積み重ねをすることによって、ときめき感度って磨かれていくと思います。
山田:
まずドミノの最初に今回の衣服カバーやお皿カバーがなれるといいですね。
近藤:
はい。自信をもってみんなにご提案できるモノができて、嬉しいなと思っています。エネルギーが高いモノとそうでないモノ、持ち主に愛されているモノは光っていて、使われているモノはくすんで見えます。モノって正直なんですよ。普段つかっているモノはごまかせないです。
山田:
なるほど。僕も、ときめくモノをたくさん使って、光り輝く毎日にしたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました!
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