民間企業としては日本初の毛織物工場を設立し、毛織物の歴史を作った「日本毛織株式会社」。
1896年の設立以来、120年以上にわたりウールや毛織物と向き合い続けているこの日本毛織のグループ会社として、2014年に設立されたのが「株式会社ニッケテキスタイル」です。
ニッケテキスタイルは主にファッション用の糸や生地の企画・製造・販売を行う企業。
今回、レディース向け「かゆみ対策インナー」で初めてファクトリエとタッグを組んでいただいた「ニッケテキスタイル」のニット製品グループ・山下さんと松山さんに、取り組みへの想いを伺いました。
※2023年10月にはメンズ向け「デイリー仕様の極細メリノウールインナー」「タイツ」も開発。
これまでは主に糸や生地の販売を行ってきたニッケテキスタイル。
ニッケテキスタイルにとって、本インナーのように「NIKKE TEXTILE」という自社の名前が付いた“ニット商品”は初めての取り組み。率直にこの取り組みについての想いをお聞きました。
左:山下さん、右:松山さん
-山下さん
「今回のインナーは、お客様のお声をしっかり聞いて、そのうえで自分たちが“ベストだ思う最高の生地”でお作りできたと自負しています。自社の名前が出るという点で、恥ずかしくない本当に良いものができました。」
-松山さん
「基本的にBtoBでのお取引がメインなので、「自分たちのウールニットをどんなお客様が手に取ってくださっているのか」までは見えませんでした。でも、今回まず(かゆみ対策インナーについては)クラウンファンディングからスタートして、多くの方に支援していただいているのを拝見し、これまでにないうれしい気持ちです。」
「自分たちがベストだと思う最高の生地」。この点についてさらにお聞きすると・・・。
-山下さん
「高品質なウール原毛を使うと当然価格も上がってきます。
今回のインナーやメンズ向けの「デイリー仕様の極細メリノウールインナー&タイツ」で使用したのは“17.5マイクロン”という非常に希少性が高く、極細のニュージーランドウール。以前もこの原毛を使って下着用の生地のご依頼をいただくことはあっても、最終的に価格面で製品化が難しい、というケースが何度もありました。」
-松山さん
「17.5マイクロンなどの細い繊維のウールを使えばチクチク感も感じにくく、肌に直接触れても違和感のないものが作れます。
しかし、“大勢のお客様が手に取りやすい価格”でとなると、比較的価格を下げやすい“繊維の太い”ウールを使用せざるを得なくて、『ウールはやっぱりチクチクする』という認識が広がってしまったように思います。」
-山下さん
「ウールの本当の価値をしっかり伝えていきたい、という想いを持っています。
だからこそ、120年以上にわたりウールと向き合ってきた我々から見ても、『これならチクチクを感じにくい』と自信を持ってお伝えできる今回の原毛・生地でものづくりができることを非常にうれしいですね。」
「ウールの価値を正しく伝えたい」。
そんなお二人にとって、「かゆみ対策インナー」の開発時、ファクトリエが肌悩みを抱えている方に“ブラインド”で複数の生地の感想を聞いたことが非常に意味があると語ります。
-山下さん
「お話したように、ウールはチクチクするものというイメージ、固定概念が消費者には刷り込まれているような状態です。もし今回のインナーも「ウールのインナー」と事前に伝えた上で試験していれば、そのイメージから違った結果になったかもしれません。
ウールであることを伏せてテストしていただいたことで、ウールが持つ天然の機能性や心地よさをしっかりと感じていただけたことが我々には大切なポイントなんです。」
-松山さん
「たとえばかゆみ対策インナーについては、肌トラブルで本当に悩んでいる方にウールの魅力が伝わりうれしいですが、人口全体で見た場合に肌悩み人口は少ないかもしれません。
そのため、販売数量で見てしまうと数は出ない(儲からない)ため、市場からは消えてしまうことがよくあります。でも、本当に困っている方に喜んでいただける商品作りはとても意義のあることだと思います。」
-山下さん
「“多く売れればそれで良い”という目線で語ってはいけない取り組みだと捉えています。
実際、社長の麻河も『このインナーは企業の社会的責任としてやらなければいけないことだ』と強く共感していますし、染色工場さんや縫製工場も賛同してくれています。関係者全員が同じ方向を向いて進められています。」
-松山さん
「そうですね。縫製工場さんもいま生産状況がとても詰まっていて、キャパシティが厳しい状態でしたが、賛同してくださっているからこそ生産ラインも調整してくださって。
そして当初は縫い代が出るロックミシンで肩回りなどを縫製しようと考えていましたが、“肌悩みの方だったら、縫い代が出ないフラットシーマが良いと思う”と意見をいただきました。フラットシーマは縫製も難しく熟練職人さんの腕が必要なので、そこも対応していただけたのは、私たちの想いに心から共感してくださったからだと思います。」
ファクトリエの取り組みについてはニッケテキスタイルだけでなく親会社の日本毛織の社員も加わり、彼らのウールへの愛情と知見が存分に生かされたそう。
-山下さん
「120年以上ウールと向き合っているので、社内にはウールマニアのようなウールへの熱い情熱をもつ社員がたくさんいます(笑)。会社自体もまじめな雰囲気で、口先だけで“ウールはいいんですよ”と言いたくない。まずしっかりとデータでウールの状態や品質などをチェックして糸や生地を開発しています。
ウールの欠点としてよく言われるのが
・チクチクする
・毛玉ができる
・家庭洗濯できない
の3つですよね。
しかし、ウールへの探求心が深い(深すぎる)技術者の協力もあって、今回の生地は3つともクリア。現段階では社内的に最高の素材と断言できます。」
びしびしと伝わってくるウールへの愛情。
しかし愛情だけではなく、糸を作る紡績企業として“ものづくりへの姿勢”も情熱的。
-山下さん
「世界的に見ると、生地を採用するブランドや商社さんが何と言おうと、自分たちが作ったのはこれ。これしかありません。というスタンスの紡績会社が多いです。
逆に私たちは“お客様の声を聞いてものづくりに生かす”というスタンスです。」
日本でもそういう姿勢でものづくりを行う企業は減っているそう。
-山下さん
「かゆみ対策インナーは、ファクトリエさんが肌悩みの方にアンケートを取ってくださって、身体にピタッとするシルエットよりも、身幅が広くゆったりしている方が良いという意見をお聞きし、それを踏まえてパターンを起こしましたが、お客様の声を聞かなければわからないことばかりです。
かゆみ対策インナーやデイリー仕様のウールインナーの生地も現段階では一番良いものですが、これから実際に長期間使っていただく中でお客様から新たなお声をいただくと思いますが、そういった声にもしっかり耳を傾けて、より良いものづくりをしていきたいですね。」
工場の設備投資も毎年行うなど、常に変化を起こそうとチャレンジしている日本毛織、そしてニッケテキスタイル。
そこには、120年以上にわたり繊維業界をリードしてきた歴史にあぐらをかぐことなど一切ない、“まじめに”ものづくりに向き合う姿勢が感じられます。
そんな姿勢の末に生まれたウールインナーぜひ手に取ってみてくださいね。
ファッション用テキスタイルの企画・製造・販売を手掛ける株式会社ニッケテキスタイルは、日本毛織株式会社の子会社として2014年に設立。紡績・織絨・染色・整理と一貫生産を行う工場をベースに、あらゆるテキスタイルコレクションを世界中のファッション関係者に向け発信し続けています。
愛知県一宮市今伊勢町本神戸字河原2
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