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化繊ヒートインナーでかゆい!なぜ?原因と対策、代わりに選ぶべき生地とは

化繊ヒートインナーでかゆい!
なぜ?原因と対策、代わりに選ぶべき生地とは

化学繊維で作られたヒートインナーは保温性に優れている一方で、「チクチクする」「かゆみを感じる」という声をファクトリエのお客様からよく伺います。特に超乾燥肌やアトピー性皮膚炎など肌トラブルを抱えている方は、せっかく買ったのに着られない、となると残念ですよね。今回、かゆみがなぜ起きるのかの原因と代わりとなりそうな肌に優しいインナーをご紹介します。

ファクトリエ代表 山田敏夫
熊本県出身。創業100年を超える老舗洋品店に生まれる。大学在学中、フランスに留学しグッチ・パリ店で勤務。一流のものづくり、商品へのこだわりなどを学ぶ。2012年、工場直結ジャパンブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセント株式会社を設立し、これまで700以上の繊維工場を訪問。2023年、服で負の課題を解決する新規事業「かかりつけ衣」を開始し、自身がアトピー性皮膚炎であることから「かゆみ対策インナー」を開発。著書「ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす服革命(日経BP)」

化繊ヒートインナーでかゆみが発生する理由とは?

化繊ヒートインナーは「ポリエステル」「レーヨン」「アクリル」「ポリウレタン」などの化学繊維を組み合わせて作られています。
そもそも「化学繊維」とは?

化学繊維には、合成繊維と再生繊維があります。

合成繊維は、ポリエステル・アクリル・ナイロンなど石油や天然ガスを原料とするもので、再生繊維はレーヨン・テンセル・キュプラなど天然の木材などから精製されたものです。

では石油からどうやって糸を作っていくのかというと、高分子化した合成繊維原料から紡糸する方法は3通りあると言われています。溶媒に溶かし、ノズルを通して凝固液中に押し出す「湿式法」、溶媒を蒸発させて糸を凝固させる「乾式法」、冷却固化させる「溶融法」です。

一方で再生繊維は、植物の主成分である“セルロース”を、化学的に取り出し、薬品で溶かして“繊維”に再生します。

そのため、世間一般で言われる化学繊維とは、合成繊維のことを差していることが多いです。
合成繊維のヒートインナーでかゆくなる原因は以下の2点が挙げられます。

1)粗い化学繊維による摩擦

かゆみの原因、症状を悪化させる要因に肌着や衣類の摩擦による刺激があります。実際、肌着や衣類を着ているだけで皮膚に負担がかかるのです。

そのため、肌着や衣類の刺激を軽減するには素材選びが大事です。繊維の編み方や糸の細さや柔らかさを見て、刺激がないものを選びましょう。

では、ものづくりの視点で、「どうすれば刺激性の少ない繊維を作ることができるか」には、2つの方法があります。

1.細くて柔らかい繊維を使用する

粗い化学繊維を着ると、肌に刺さり、皮膚への刺激となります。私自身、タイトで重いジーンズを履いていた際に、足の太ももとふくらはぎがジーンズの粗い繊維がこすれ、真っ赤になったことがあります。これは刺激性の接触性皮膚炎と言われるものだそうです。粗い繊維によってチクチク、ヒリヒリした痛みやかゆみが起こります。原因となる服(繊維)を突き止めて、その繊維との接触を回避する必要があります。
例えば、コットンであればおすすめは超長綿という素材。綿花の中で5%しか採取されない超長綿は、繊維は繊維が細く、35mm以上ある綿のことです。とても細くて長い綿なので、しなやかさがあり、肌触りがよいこともあって肌への刺激が少ないでしょう。また17.5マイクロン(Super 120’S)以下の細さのメリノウールはアトピー性皮膚炎の子どもに良い効果が現れたとマードック小児研究所 (MCRI:Murdoch Childrens Research Institute) のジョン・スー准教授主導による研究で検証されています。

出典:
https://www.woolmark.jp/globalassets/_06-new-woolmark/_industry/research/factsheets/jp/2021/wool_is_good_for_skin_4pp_jp_lr.pdf

2.生地の編み方を緩く作る

肌への締め付けが刺激となるため、できるだけ肌を締め付けない繊維がおすすめです。女性の方によく聞くのは、下着で締め付けられた部分が痒くなる「下着かぶれ」。ブラジャーのワイヤーや肩紐、ホック、タグ、レースなどの圧迫や摩擦が原因で痒みが起こります。歩いたり座ったりすれば繊維が肌に擦れてダメージを受けてしまいます。刺激を軽減するためには、素材(編み方)が重要となります。テンションを緩めに編んだ素材は締め付けが少なく、ストレスが軽減されます。サイズ感だけでなく、ぜひ緩めの繊維を選ぶようにしましょう。

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皮膚科医 大矢先生のコメント:衣服の摩擦や静電気はかゆみの原因に
https://factelier.com/contents/16071/

冬は乾燥して痒みを感じることが多くなります。
皮膚の表面には常に微弱な電気が流れていて、乾燥肌になるとこの電気は皮膚の表面に蓄積しやすくなると言われています。

このとき、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維の下着を身につけていると水分量の少ない化学繊維は電気を通しにくいのでさらに電気が蓄積しやすくなります。何かの拍子にこの溜まった電気が放電され、痒みを誘発することとなります。それに対して、コットンやシルク、ウールなどの天然繊維は水分量が多く、電気を通しやすいので蓄積する前に皮膚から下着、足、地面の順に放電していきます。そのため、コットンやウールの下着ではかゆみの誘発が起きにくいのです。

乾燥するほど、静電気も起きやすくなります。ヒートインナーなどの発熱下着は熱がこもって、かゆみやあせもを起こすことがあります。

2)大量の汗は乾きにくく滞留

実は冬に「汗をかいたな」と思わなくても、一日1リットルもの発汗があるそうです。

ポリエステルなどの化学繊維の多くは吸湿性が低く、速乾性が高いため、汗が皮膚に残り、皮膚を刺激します。汗には炎症を起こす物質が含まれるため、汗がたまりやすく、熱気や湿気がこもってしまいます。そのため、摩擦を受けやすい部位(首周りや脇の下、腹回り、肘の内側)に発生してしまいます。できるだけ、通気性、吸湿性の高い下着や衣類を着ることが重要です。

化繊インナーでかゆみを発生させないための対策とは?

かゆいけれど、機能性インナーを着続けたいとお考えの方は、以下の4点に注意してインナーを選んで生活してみてください。

1)常に清潔な状態を保つ

化繊インナーは吸湿性が低いため、汗をかいたらすぐに拭き取り、こまめに着替えて、皮膚を清潔に保つ必要があります。

2)こすれにくい下着を選ぶ

肌への締め付けが刺激となるため、できるだけ肌を締め付けず、ゆとりのあるサイズを選ぶことがおすすめです。女性であればブラジャーのワイヤーや肩紐、ホック、タグ、レースなどの圧迫や摩擦が原因で痒みが起こります。歩いたり座ったりすれば繊維が肌に擦れてダメージを受けます

3)ゴムや縫い目のないショーツを選ぶ

ウエストや裾のゴムやレース、折り返し部の厚みや縫い目が肌を刺激し、かゆみの原因になります。ゴムや縫い目のない皮膚に優しい化繊インナーも出てきていますので、そのようなものを選ぶのがおすすめです

4)品質表示のタグを切る

タグは縫い糸も切って全部取り外しましょう。最近はプリントタイプも増えていますので、着るのが手間な方はそういったプリントタグの化繊インナーを選んでみてはどうでしょうか。

代わりになる、おすすめの繊維とは?

かゆみ対策を考えつつ、インナーの機能性も重視する場合、どの繊維を選べばいいのでしょうか?私はこの2点がおすすめです。どちらも天然繊維になり、肌への負担が少ないです。

1)メリノウール

メリノウールとは、オーストラリアやニュージーランドで飼育されているメリノ種という羊の毛のことです。保温性が高く、羊毛の中で最も高級な一品とされています。
「クリンプ」と呼ばれる縮れた構造になっており、大気中の湿気を吸収して熱を発生させます。そして繊維の表面にあるスケールという鱗状の組織が、この熱を逃がさない働きを持っています。中でもメリノウールの繊維は、ほかの羊毛より縮れ(クリンプ)が細かく、絡み合いやすいです。繊維内に空気を含むことで、暖かく熱を逃がしにくい構造になっています。

メリノウールは水をよく弾くため汚れがつきにくく、吸湿性にも優れた素材のため、暖房の効いた室内で汗をかいても蒸れずに気持ちよく着ることができます。また弾力性があり、肌にストレスを与えないという特徴もあります。ただ、ウール自体はタンパク質でできているため虫食いを考慮した保管が必要になる点はデメリットと言えるでしょう。

2)綿(コットン)

多年草「ワタ(綿)」の「種子毛」からとれる繊維や、その繊維から作られる糸です。ワタの種子毛は、白くてふわふわした特徴があり、種子につく綿花をねじり糸状の繊維にして作られます。
中が空洞になっており、空気を多く含むため、夏は通気性・吸湿性に優れサラサラ、冬は保温性があり暖かい着心地で、オールシーズン快適に使うことができます

オーガニックコットンは、厳しい基準をクリアした有機栽培によって生産されたコットン(綿)です。普通のコットン栽培では害虫駆除、落葉剤など、たくさんの化学肥料と農薬が使われています。 つまり、綿花栽培をすると土壌や水質への環境負担がとても大きいのです。 一方、オーガニックコットンは安全性に配慮した栽培を行うため、土壌や水質汚染が少なくなります。SDGsの観点からも注目されています。

3)メリノウールとコットンの違い

同じ天然繊維ですが、特徴は大きく違います。肌着・下着という視点で考えるとメリノウールが優れているのではないかと考えています。

1.汗の吸湿性

メリノウールの衣類はコットンの2倍、ポリエステルの30倍の水蒸気を吸収します。汗には炎症を起こす物質が含まれるため、汗がたまりやすく、熱気や湿気がこもりやすい部位(首周りや脇の下、腹回り、肘の内側)に好発してしまいます。できるだけ、吸湿性の高いウール素材がおすすめです。

2.汗の放出性

吸収した汗はすぐに乾かす必要があります。その点でウールは一般的なアパレル素材の中で最も通気性があると言われています(メリノウールが登山家やキャンパーから愛されるのもそれが理由です)。極細メリノウールは、肌の隣に着用すると、ダイナミック・バッファーとして機能し、布地と肌の間の湿度レベルと温度を安定させるのに役立ちます。

寒い冬には暖かいインナーを着たいですよね。ただ、肌トラブルを抱えている方にとって化学繊維のヒートインナーは注意が必要です。ご自身の肌に湿疹やかゆみが起きていないかを日々確認しましょう。肌は、人の体全体を包む臓器です。かゆみが出た場合は、体のためにも、柔らかく、通気性に優れた天然繊維の下着を検討いただければと思います