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肌のかゆみの原因と対策とは?

肌のかゆみの原因と対策とは?
アレルギー科医「大矢先生」にわかりやすく教えていただきました

敏感肌や乾燥肌の方で「肌がかゆい」とお悩みの方は多くいらっしゃいます。肌がかゆいと夜も眠りにくく、かきむしることで肌トラブルも発生して本当につらいですよね。かゆみの原因やメカニズムは?かゆみが発生しやすい方が普段の生活で気を付けることは?国立成育医療研究センター アレルギーセンター長の「大矢幸弘(おおやゆきひろ)」先生にお話しを伺ってきました。

大矢幸弘(おおやゆきひろ)先生
国立成育医療研究センターアレルギーセンターセンター長。1985年名古屋大学医学部卒業、同大学小児科、国立名古屋病院小児科を経て95年国立小児病院アレルギー科医員。2002年から国立成育医療センター(現在の国立成育医療研究センター)アレルギー科医長を経て現職。この間、1994年ハーバード大学心身医学研究所、97年から2002年ロンドン大学聖ジョージ医学校公衆衛生科学部研究員を併任。専門は小児科学、アレルギー学。日本小児科学会指導医、日本アレルギー学会専門医指導医、日本心身医学会専門医。

肌のかゆみはなぜ起こる?メカニズムと6つの原因

神経の痒みを感じる受容体が、皮膚にあります。その痒みの受容体に、痒みを感じさせるような刺激が入ると、(痒みを)感じるわけです。
皮膚に何らかの炎症が生じると、そこに炎症を起こしている物質から、サイトカインなどの神経に対するいろいろな刺激物質が出てきます。それが神経の受容体を刺激し、痒みが伝達されていく、ということなのです。

皮膚トラブルのない方の場合は、サイトカインがたくさんは出てこないので痒くないわけですが、皮膚トラブルによる炎症があることによって、普通だったらあまり出てこないような物質がたくさん伝達されてしまい、「痒い状態になる」のです。

痒みを出してくる主な物質としては、ヒスタミンがよく知られています。だから痒み止めの飲み薬というと、抗ヒスタミン薬があります。それ以外にも、アトピー性皮膚炎の場合は、むしろヒスタミンよりサイトカインの働きのほうが強いので完全には抑えられない、というような現象があります。きちんと炎症を抑える治療が必要になってきます。

かゆみの主な原因についてまとめました。

1)汗とかゆみの関係は「表皮のバリア機能の低下」が原因に

汗をかくと肌がかゆくなる方は多いですが、汗がただ出るだけでは痒みはありません。汗の中には皮脂やタンパク質や、塩分、抗菌物質、マラセチア(カビの一種)などの成分が含まれます。

しかし、30分~1時間の時間が経つと、抗菌力は失われてしまうと考えられています。その結果、汗の成分がかゆみの原因となる皮脂やタンパク質、塩分、細菌が優勢になってしまうのです。

黄色ブドウ球菌はいろんな毒素を出します。それが炎症を悪化させることにもなります。炎症でバリア機能が下がっている場合は特に、マラセチアや塩分などが刺激になり、かゆみの原因になります

アトピー性皮膚炎の方の場合は、黄色ブドウ球菌が皮膚の表皮の上に乗っかっているだけではなくて、実はその中にも入り込んでいる、ということが分かってきました。

2)衣服の摩擦や静電気とかゆみ

化学繊維の中で、静電気が起きるようなものは、皮膚に対する刺激が強いので望ましくありません。電気は、神経に対する信号です。微細な電気信号が、脱分極しながら伝わっていくわけです。当然神経に対して刺激になります

化学繊維はアレルギーではなく刺激

(画像提供:ザ・ウールマーク・カンパニー)

化学繊維アレルギーという言葉が使われていることがありますが、実はアレルギーではなく、単に刺激になっているだけという可能性が高いのです。着てすぐに痒くなるような場合は、単に刺激で痒くなっているだけの可能性があります。いわゆる接触性皮膚炎というものです。これらは衣類の摩擦が原因です。

3)菌とかゆみの関係

黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎の人の表皮の上に乗っかっているだけではなくて、実はその中にも入り込んでいる、ということが分かってきました。かつ、黄色ブドウ球菌はいろんな毒素を出すのです。それがまた炎症を惹起してくる素になったりします。

汗の効果とシャワーの重要性

汗をかくことは良いことです。汗の中には、抗菌物質(黄色ブドウ球菌をある意味で殺すような物質)もあれば、表皮を覆ってくれる皮脂も出てきます。皮脂は保湿剤の代わりになります

しかし、抗菌物質の抗菌力は、わりと早く失われてしまうのです。30分、1時間と時間が経てば、抗菌力は失われてしまうと考えられています。ですので、新しい汗は比較的良いが、時間が経てば経つほど抗菌力はなくなってしまいます

そして最後に残るのは、古い脂と刺激になる塩分やタンパク質。タンパク質にはマラセチア(皮脂などを好む酵母様真菌=カビ)の成分も入っているため、あまり良くありません。さらに刺激になりやすいのは、汗の中に入っている塩分です。

ただ、塩分は水溶性ですので、シャワー浴をするだけで塩分は流せます。汗をかいて、30秒でいいからサッと水やお湯で流すと、脂は肌に少し残り、刺激になる塩分や水溶性のタンパク質は流れますのでちょうど良いと思います。

4)肌の乾燥とかゆみ

急に温度が低下するタイミングは危険です。肌の角質細胞には、乾燥から守るバリアとなる天然保湿因子があるのですが、天然保湿因子は常にフィラグリンという物質から、酵素によってだんだんと作られているのです。

ところが、その酵素の働きが、夏と冬では実は違い、冬の方が少なくなります。健常な人は、天然保湿因子を作る能力があるため、乾燥しにくいのですが、その力の弱い人は、冬になると乾燥がひどくなり、バリアが低下してしまいます。そのため、きちんと保湿して、バリア機能を補ってあげる必要があるわけです。

冬には、アトピー性皮膚炎など季節の影響を受けやすい人の場合には、乾燥する時期にはきちんと保湿剤を塗って守りましょう、という話をしています。
日本は、アトピー性皮膚炎が非常に多い国なのです。そのため、特に11月は急に悪化する方が多いのです。

5)花粉などアレルギー物質とかゆみ

2月から4月にかけて、杉に代表される樹木の花粉がよく飛ぶ時期です。そのため、3月、4月はアトピー性皮膚炎が悪化する時期なのです。

花粉の影響で、体の中でアレルギー反応がすごく起こりやすくなります。体の中だけでなく、特に皮膚に様々な炎症を起こす細胞が少しずつ増えていくのです。春になると、その細胞の影響がだんだん大きくなり、一気に悪化する、ということがあります。一日にたくさん花粉を浴びてしまった場合、その時にくしゃみが出たり、目が真っ赤になったり、場合によっては蕁麻疹が出たり、ということはあるかもしれません。

しかし、実際は、花粉が一度にたくさん体に入ったからすぐに悪化というより、花粉を毎日浴びていることによって、少しずつ体内に炎症を起こす細胞が増えてしまい、アトピー性皮膚炎が悪化する、という形が多いです。そのため、花粉の季節が始まって、後半あたりからお肌の具合が悪くなってくる、という方が多いです。

洋服は、とにかく花粉が体の中に入らないようにするのがまず大事で、花粉の時期には外には干さないほうがいいです。家の中で乾燥機を使うことをお勧めします。

6)急なアレルギー反応や蕁麻疹

アレルギーを惹起するような物質を食べてしまったという時には、マスト細胞にくっついている受容体に、そのアレルギー反応のある食べ物とドッキングする受容体を持っています。それらがドッキングした際、バッと信号が入って、マスト細胞の中にあるヒスタミンが出るのです。そのヒスタミンが神経を通してかゆみにつながる、というメカニズムが働きます。

また、かゆみは、Cファイバー(C線維)という神経の線維も、このマスト細胞につながっています。嫌なことがあったり、冷たい・熱いなど、様々な刺激が入った際、神経を通ってマスト細胞に刺激が入ると、そこからヒスタミンが出る、ということもあります。そうするとまたかゆみに繋がります。

肌のかゆみを起こさないための5つの対策法

ここからは、できるだけ肌のかゆみを起こさないための対策法を解説します。どれもアレルギー科医の大矢先生が教えてくださったことです。ぜひ普段の生活に取り入れてください。

1)適切なシャワーやふき取りで体を清潔に保つ

汗をかいた後に問題となるのは、残った古い脂と刺激になる塩分やタンパク質ですタンパク質にはマラセチア(皮脂などを好む酵母様真菌=カビ)の成分も入っているため、シャワーで清潔に保つ必要があります。特に汗をかく夏は、シャワー浴を頻繁にやるだけで、お肌の状態はずいぶん良くなります。

実は、シャワー浴をする人としない人を比べた研究があり、シャワー浴をした子どものほうが、明らかにアトピー性の状態が良くなる、という比較研究があります。

毎回石鹸で洗うと大変ですし、皮脂も落ちてしまうので、石鹸は1日に1回使えば十分です。

2)汗を吸って発散してくれて、刺激の少ない下着を選ぶ

汗をかいた時に、汗をきちんと吸い取ってくれる機能がある下着が良いです。汗に残った刺激になる塩分やタンパク質が肌に刺激として入らないよう、汗をきちんと吸収してくれることが望ましいです。

ただ、吸収したとしても、汗で湿っている状態が続くのは良くありません湿っている状態が続くと、皮膚に塩分がまた戻る可能性があります。また、皮膚の表面の湿度も上がるため、カビの問題も出てきます(カビは湿度を好みます)。また、皮膚の温度も低下します。皮膚の表面温度が下がると免疫は低下するため、その点から考えても濡れている状態が続くのは決して良くありません

つまり、汗はしっかり吸収してほしいが、いつまでも湿った状態ではいてほしくないわけです。

接触性皮膚炎には「刺激性の皮膚炎」と「アレルギー性の皮膚炎」があります。
刺激が入ってすぐに起こるのは、接触性の「刺激性の皮膚炎」。刺激が入ってから2~3日後に起こるのは、接触性の「アレルギー性の皮膚炎」です。

そのため、化学繊維などを着てすぐに痒くなるようなタイプは、アレルギー性の皮膚炎ではなくて、「刺激性の皮膚炎」であることがほとんどです。

下着を着て2~3日経ってから痒くなってきたという方は、あまりいないですよね。特定の衣服を着て、その日に痒くなる場合、アレルギーではなく、たいていは「刺激性の皮膚炎」であることが多いと思います。

3)朝と夜の1日2回、しっかり保湿する

全ての保湿剤がそうだとは言いませんが、少なくとも日本でよく使われている保湿剤に関しては健常成人にやったデータがあり、1日に2回スキンケアをすることをお勧めしています

保湿剤を「朝・夜に塗る場合」と、「1日1回だけ塗る場合」との比較研究があります。毎日少しずつ差がついてきて、1週間~2週間ぐらいで、明らかに有意差が出てきます。バリアの強化が、朝・夜に一日2回塗っている人のほうが、1日1回だけ塗る人よりも高いのです

保湿剤は急激に乾燥肌が加速する11月から塗ることがおすすめ

11月になると急に寒くなるので要注意です。気温とともに湿度も下がり、乾燥しやすくなるからです。おすすめなのは、一年を通して保湿剤を塗り、ブロックすること。朝・夜に保湿剤をきちんと全身に塗っている方は、11月の急に乾燥が進む時期に悪化しません

逆に、1日に1回しか保湿剤を塗っていない方や、部分的にしか保湿剤を塗っていない方は、11月から12月にかけての急に乾燥が進む時期に悪化してしまいます

冬の下着選びは、保湿剤を繊維が吸い取らないこと

保湿剤が繊維にあまりくっつかないものであれば、理想です

綿が良いからと思って綿を着る方が多いのですが、軟膏や保湿剤が付着したところが黒くなり、洗剤で洗っても汚れが取れなくなります。脂なので熱湯に入れると取れるのですが、「火傷しないようにやってね」といつもお伝えしています。
ただ、熱湯をかけると肌着の生地がかたく・粗くなるため、肌への刺激とならないか心配しています。

その点、メリノウールは表面への付着しやすさを測る界面自由エネルギー(SFE)が綿より低いため、貼りつきにくく、汚れにくいと聞いたことがあります。

(画像提供:ザ・ウールマーク・カンパニー)

こちらのグラフは、各種繊維の界面自由エネルギー比較。ウールは他の繊維に比べて界面自由エネルギー(SFE)が低く、繊維表面に水や油が貼りつきにくいとされています。例)コットン:200なので、ウールの約10倍貼りつきやすい

4)タオルは刺激の少ないものを選ぶ

できるだけ柔らかくて皮膚に刺激のないタオルがおすすめです。水気を拭き取った後、清潔な状態で軟膏を塗って保湿することが大切です。

外出先の場合は、濡れタオルと乾いたタオルを2つあると良いと思います。濡れタオルで汗を拭き取り、乾いたタオルで拭くというのがお勧めです。

5)石鹸洗剤など残留しない洗濯洗剤を選ぶ

合成洗剤は生態系に影響を与えると言われています。それは、薄まっても界面活性力が残るため、川に流れると生態にダメージを与えてしまうからです。

合成洗剤で洗った衣類を着た際、汗をかくと微量かもしれませんが、溶け出してくるのではないかと思われます。そうすると、それは界面活性力があるわけだから、それが肌に付いた際に刺激となります。実際に患者さんの話を聞いていると、石鹸洗剤より合成洗剤を使った時のほうが肌の調子が悪い、という方が多いのも事実です。こういったメカニズムがおそらく働いているのだろうなと私は思っています。

石鹸洗剤は、ある濃度から下になってしまうと、界面活性力を失う=洗浄力がなくなります。そのため川に流しても、さらに薄まるだけなので、生態系への影響はありません。そのため、肌が弱い方にとって合成洗剤より石鹸洗剤を使う方が安全だろう、ということは理論的には言えます
ただし、しっかり濯ぎをした場合には、そんなに大きな差は出ないと思います。

6)腸内環境もアレルギーとは密接に関わっている

腸内環境が良いほど、アレルギー疾患はできにくいと考えられています
腸内細菌叢は、人間が自分の力で作り出すことのできない栄養素を作り出して、人間に供給してくれる役割があります。

この腸内細菌叢の状態によって、それが作り出す短鎖脂肪酸が多いほど、アレルギー疾患はできにくいのです。それは短鎖脂肪酸が免疫の細胞に対する刺激を与え、アレルギーを抑制する細胞を増やす働きがあることが分かっています。

腸内環境を良くするには、日本であれば、伝統的な和食がお勧めです。逆に、腸内環境を乱すのは人工甘味料や砂糖と言われているので注意が必要です。

あとがき

3年ほど前に「世界一受けたい授業(日本テレビ系列)」という番組を拝見し、大矢先生のご著書を読みました。私自身が幼少期よりアトピー性皮膚炎だったこともあり、一度ぜひお会いしたいと手紙を書いたのが先生との出会いのきっかけです。

先生はいつも「妊娠中から正しいアレルギーに関する知識を身につけることが大切」とおっしゃられます。先生が長を務めるアレルギーセンターでは「生まれてくるお子さんのためのアレルギー予防オンライン教室」を毎月開催されており、アレルギーに関する正しい知識を学べる場所を提供しています。

厚生労働省のデータをみると、アレルギー疾患により医療機関を受診する患者数は年々増加していることがわかります。大矢先生の持つ知識が多くの方に伝わり、少しでもアレルギーで悩む方が減ることを心から願っています。

ファクトリエでは肌にやさしい天然素材100%の「かゆみ対策インナー」や、衣類に洗剤が残りにくい「海をまもる洗剤」をつくっています。