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化学繊維でかゆいのはなぜ?原因と対策をアレルギー科医「大矢先生」に聞いてみました

化学繊維でかゆいのはなぜ?
原因と対策をアレルギー科医「大矢先生」に聞いてみました

接触冷感のTシャツや形態安定シャツなど、衣服には化学繊維が多く使われています。便利な反面、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維に肌が負けて湿疹やかゆみが出るようになったという声をお聞きします(アレルギーの世界でも近年、肌が食べ物に触れることでアレルギーが発生することわかってきたそうです)。健やかな肌を保つため、少しでもお役に立てるよう対策をまとめました。

大矢幸弘(おおやゆきひろ)先生
国立成育医療研究センターアレルギーセンターセンター長。1985年名古屋大学医学部卒業、同大学小児科、国立名古屋病院小児科を経て95年国立小児病院アレルギー科医員。2002年から国立成育医療センター(現在の国立成育医療研究センター)アレルギー科医長を経て現職。この間、1994年ハーバード大学心身医学研究所、97年から2002年ロンドン大学聖ジョージ医学校公衆衛生科学部研究員を併任。専門は小児科学、アレルギー学。日本小児科学会指導医、日本アレルギー学会専門医指導医、日本心身医学会専門医。

化学繊維でかゆみが発生する理由と原因

ポリエステルなどの化学繊維の多くは吸湿性が低く、速乾性が高いため、汗が皮膚に残り、皮膚を刺激します。汗には炎症を起こす物質が含まれるため、汗がたまりやすく、熱気や湿気がこもってしまいます。そのため、摩擦を受けやすい部位(首周りや脇の下、腹回り、肘の内側)にかゆみが発生してしまいます。ポリエステルでかゆみが出てしまう方は、できるだけ通気性、吸湿性の高い下着や衣類を着ることが重要です。
また、肌への締め付けが刺激となります。ブラジャーのワイヤーや肩紐、ホック、タグ、レースなどの圧迫や摩擦も原因となり、かゆみが起こります。歩いたり座ったりすれば繊維が肌に擦れてダメージを受けてしまいます。ウエストや裾のゴムやレース、折り返し部の厚みや縫い目が肌を刺激し、かゆみの原因になります。
刺激を軽減するためには、素材(編み方)も重要となります。化学繊維でも天然繊維でも、テンションを緩めに編んだ素材は締め付けが少なく、ストレスが軽減されます。サイズ感だけでなく、ぜひ少し緩めの素材を選ぶようにしましょう。

かゆみの原因、症状を悪化させる要因に肌着や衣類の摩擦による刺激があります。実際、肌着や衣類を着ているだけで皮膚に負担がかかるのです。

粗い化学繊維を着ると、肌に刺さり、皮膚への刺激となります。粗い繊維によってチクチク、ヒリヒリした痛みやかゆみが起こります。原因となる服(繊維)を突き止めて、その繊維との接触を回避する必要があります。

「化学繊維アレルギー」とは?

化学繊維については、実はアレルギーではなく、単に刺激になっているだけという可能性が高いのです。よく原因が分からないものは、何でもアレルギーと診断される傾向がありますが、厳密な意味でのアレルギーではありません

そもそもアレルギーには、Ⅰ型(即時)とⅣ型(遅延)があります。

Ⅰ型(即時)は、食物アレルギーとか花粉症のように、あるタンパク質に対する、特異的なIgE抗体を作ってしまう状態です。ホルマリンのような分子量の小さいものは人体のアルブミンなどのタンパク質と結びついて特異的なIgE抗体が作られます。Ⅰ型アレルギーは即時型アレルギーといって、体に入ってくるとすぐに反応してしまう。だから典型的な症状は蕁麻疹なのです。

もう一つは、Ⅳ型(遅延)アレルギーで、タンパク質ではないものにも起こります。
特に金属アレルギーというのをお聞きになったことがあると思いますが、IgE抗体は関与せず、繰り返し金属に皮膚が曝されるうちに金属に感作を受けたT細胞ができます。そしてその金属と感作T細胞が反応してサイトカインが放出されアレルギー反応を起こします。この反応はゆっくりおこるので2日とか3日とかいう時間がかかるのです。

化学繊維によるアレルギーはどちらなのか?というと、化学繊維はタンパク質ではないことが多いので、Ⅳ型(遅延)アレルギーのはずですが、着てすぐに痒くなる人が多いのはなぜでしょうか。本当はアレルギーではなく、単に刺激で痒くなっているだけの可能性があります

刺激が入ってすぐに起こるのは、接触性の「刺激性の皮膚炎」です。
刺激が入ってから2~3日後に起こるのは、「アレルギー性の皮膚炎」です。

あるものを着てわりとすぐに痒くなるようなタイプは、接触性皮膚炎の中のアレルギー性の皮膚炎ではなくて、「刺激性の皮膚炎」であることがほとんどです。

だからたいてい、下着を着て2~3日経ってから痒くなってきたという方は、あまりいないですよね。毎日下着を着替えるから。そういう場合は、アレルギーではなくて、たいていは刺激性の接触性皮膚炎であることが多いですね。
化学繊維は、そういう刺激性の皮膚炎を起こす方がいらっしゃいます。

衣服の摩擦や静電気はかゆみの原因に

化学繊維の中で、静電気が起きるようなものは、皮膚に対する刺激が強いので、望ましくないです。静電気が皮膚に触れてくると、体が帯電する状態になります。電気は、神経に対する信号ですよね。そもそも神経は、微細な電気信号が、脱分極しながらバーッと伝わっていくわけです。だから電気が入ってくると、当然神経に対して刺激になりますよね。だから、「あー痛い」とか、静電気があると感じますよね。
だから、もろに神経に刺激が入っちゃっているわけです。当然ですが、神経に対するダメージだけではなく、おそらく他の組織に対するダメージも、当然出てきます。ですから、静電気が起こること自体は、体にとっては良いことではないです。

化学繊維で肌がかゆい人の衣類選びと対策

できるだけ「天然繊維」で汗の吸収・放出がよく、柔らかく、摩擦が少ない肌にやさしい生地を選ぶことが大切です。肌着や衣類の刺激を軽減するには素材選びも大事です。繊維の編み方や糸の細さや柔らかさを見て、刺激がないものを選びましょう。

1)かゆくならない肌にやさしい肌着を着る

肌に直接化学繊維の服が当たらないように、肌にやさしい肌着を着ることがおすすめです。例えば、コットンであればおすすめは超長綿という素材。綿花の中で5%しか採取されない超長綿は、繊維は繊維が細く、35mm以上ある綿のことです。とても細くて長い綿なので、しなやかさがあり、肌触りがよいこともあって肌への刺激が少ないでしょう。オーガニックコットンも良いとは思いますが、どちらかというと繊維が細くて柔らかいかを優先して選ぶことがおすすめです。

またウールの中でも17.5マイクロン(Super 120’S)以下の細さのメリノウールはアトピー性皮膚炎の子どもに良い効果が現れたとマードック小児研究所 (MCRI:Murdoch Childrens Research Institute) のジョン・スー准教授主導による研究で検証されています。

出典:
https://www.woolmark.jp/globalassets/_06-new-woolmark/_industry/research/factsheets/jp/2021/wool_is_good_for_skin_4pp_jp_lr.pdf

メリノウールは水をよく弾くため汚れがつきにくく、吸湿性にも優れた素材のため、冷房・暖房の効いた室内で汗をかいても蒸れず、一年中、気持ちよく着ることができます。

肌に触れるインナーに肌に優しい素材を着用することで、安心して好みのシャツやニットを楽しんでいただけると思います。

2)化学繊維など静電気の起きる素材を避ける

先ほどお伝えしたように静電気は当然体には良くないです。微細なものだったら「あー痛い」とか、「パチパチした」というぐらいで済むけれども、体に良いわけではない。だから、静電気が起きないほうが当然いいだろうとは思います。皮膚に対する刺激だけではなく、全身に対する影響があるでしょう。

化学繊維に対して、コットンやシルク、ウールなどの天然繊維は水分量が多く、電気を通しやすいので蓄積する前に皮膚から下着、足、地面の順に放電していきます。そのため、コットンやウールの下着ではかゆみの誘発が起きにくいのです。

また、汗をかいた時に、下着に汗をきちんと吸い取ってくれる機能がある生地がいいです。ですから、皮膚に刺激として入っていかないように、下着が汗をきちんと吸収してくれることが望ましいです。ですから、なるべく汗を吸収しやすい下着を着てもらったほうが、当然良いわけです。化学繊維は吸収が低いのであまりおすすめしません。

3)保湿剤(クリームや軟膏)を吸わない繊維を選ぶ

かゆみがある方は肌を保湿クリームを塗ると思うのですが、保湿剤が繊維にくっつかないものであれば、理想です。患者さんたちが困ると訴えられるのは、「綿が良いから」といって、綿を着られる方が多いのですが、だんだんと(軟膏が)黒ずんできます。

それを普通に洗剤で洗っても汚れが取れないので、、熱湯を使っているそうです。そのため、「火傷しないようにやってね」というのですが、どうしても繊維は傷んで粗くなってしまいますよね。

軟膏や保湿剤があまりつきづらい生地というのは、かなり大事な性質ですよね。

(画像提供:ザ・ウールマーク・カンパニー)

こちらのグラフは、各種繊維の界面自由エネルギー比較。ウールは他の繊維に比べて界面自由エネルギー(SFE)が低く、繊維表面に水や油が貼りつきにくいとされています。例)コットン:200なので、ウールの約10倍貼りつきやすいと言われています

4)かゆみが起きたら使用を中止し、適切な薬を使う

それぞれの人に合う・合わない繊維はあると思います。

皮膚に何らかの炎症が生じると、そこに炎症を起こしている物質から、サイトカインやケモカインなどの神経に対するいろいろな刺激物質が出てきます。それが神経の受容体を刺激し、痒みが伝達されていく、ということです。そういう痒みを惹起してくるような物質が、アトピー性皮膚炎だとIL-31とか、サイトカインが増えて、それが原因で痒くなるのです。

痒みを出してくる主な物質としては、ヒスタミンがよく知られています。だから痒み止めの飲み薬というと、抗ヒスタミン薬があります。それ以外にも、アトピー性皮膚炎だと、むしろヒスタミンよりもIL-31とか、他のサイトカインの働きのほうが強いので。痒み止めを飲んでも、痒みが2割ぐらいは治るけど、総体としては完全には抑えられない、というような現象があります。だからきちんと炎症を押さえてあげないと痒みがなくなりません適切に薬を使いながら、肌に合う下着を探していただければと思います。

あとがき

化学繊維が悪いのかというと、それ自体がかゆみの原因ではないかもしれません。肌にとって大切なのは、繊維の柔らかさ、汗を吸収・放出、静電気が起きない、保湿クリームを生地が吸わずに適切に保てること。綿は肌に優しいとされていますが、繊維が太く、粗いものは刺激となりますし、放出性(速乾性)は十分ではありません

化学繊維は柔らかい繊維もありますが、汗の吸収性に欠け、静電気という弱点もあります。肌悩みを抱えている方へのモニター調査でわかってきたのは、緩く編んだ、極細のメリノウールは一つの選択肢となるのではということです。それでも合う・合わないは人それぞれになりますので、ぜひ柔らかさ・通気性などを意識して下着を選んでみてはいかがでしょうか。