FACTORY
山梨県の南アルプス山麗は、今でこそ果樹園が広がっていますが以前は一面桑畑でした。そのような環境の中で戦前より義理の祖父が小林製糸工場を営んでいました。当時、富岡製糸場に女工さんが製糸業の技術を研修しに行き、山梨にその技術を伝えてもらったとも聞いています。戦時中は落下傘の生地を作っていましたが、戦後その需要はなくなり小林製糸工場は閉業となりました。戦後間もなくは食べるもの着るものもない環境でしたので、義理の父が「余ったシルクで何かできないか?」と考え、昭和23年より“てよこ”という小さな機械を用いて地元の子供たちのためにニットを作りました。するとそれが大変評判が良く、それをきっかけに新たにベビー子供のニットウェア製造小林メリヤスを営むこととなりました。
現在は33名でモノづくりを行っていますが、創業当時は兄弟だけで作業をしていたため1日3着しか作れませんでした。しかしその後、地元の女性が率先して手伝ってくれたおかげで量産化をすることができるようになりました。現在働いている従業員も、ほとんどが地元の人たちで20代から60代と様々な世代が活躍しています。また、私たちは技術の継承を通じ、新しい生産力を培いたいという考えから、近年の工場では珍しく日本人のみでの経営を貫いています。そうすることで地元へ貢献するとともに、雇用を生み地元の人たちへ恩返しすることを使命と考えています。
以前は売り上げを意識し、外注さんをたくさん使った薄利多売の商売をしていた時代もありました。しかし現在は1枚1枚を大切に作ることを最も大事にし、工場の内制化に取り組んでいます。そのため規模の大きさは横ばいですし、生産量はピーク時の1/2となりましたが、だからこそ目が行き届くモノづくりができるのだと考えています。これからも、購入してくださるお客様とお子様のために1枚1枚良いものを作っていきたいと思います。
ファクトリーブランドとしての強みは素材を生かすこと。そして、ベビー服ならではの豊富なサイズ展開です。すべてのサイズにおいて、きちんとパターン通りに上げる技術を持っているからこそ可能なのだと考えています。良いものづくりとは、工場が健全でしっかりとした設備を持っていることに加えて、職人さんとの繋がりがあってこそ生まれます。私たちは、紡績工場・染色工場・撚糸の職人さんなど、先代から繋がりを持つ腕の良い職人さんとの人間関係がしっかりしています。技術だけでなく職人との人間関係の基盤がしっかりとしている、言い換えればモノづくりの総合力があることが私たちの強みだと思います。
1日にだいたい200から300枚の製品を作ります。ただ、それぞれの工程に細分化されているため作り手はどうしても部分、部分の作業になりがちです。だからこそ最終製品をイメージしたモノづくりを心がけています。お客様は数多くある製品の中から一枚を購入してくださいます。ですから1枚1枚丹精こめたものづくりができるように、作り手1人1人にサンプルを見せることで頭の中で製品、そして実際に赤ちゃんが着るイメージを持ちながら一針入魂で作業してもらえるよう取り組んでいます。
デザインは様々な世代の意見を取り入れながら作ります。特にベビー服を購入するのは、おじいちゃんおばあちゃんの世代も多いので、ベテラン社員の意見は貴重です。多いときには5回デザインを作り直しますが、直すほどにより良いデザインが生まれるため、とても大切な工程です。そうした多くの過程を得て完成した製品だからこそ、実際に赤ちゃんが着ている様子を見ると大変感動します。またボタンの配置や首回りの縁どりなど、イメージと実際の仕上がりを確認することは新たなものづくりへの原動力です。オリジナルブランドが始まってまだ3年。ファクトリーブランドの拡大へ向けて私たちの挑戦はまだまだ続きます。
“ものづくりは、作り手が愛情を込めて目の届くところで責任を持って行うべきである”という信念の下、昭和24年の創業以来ベビー子供の専業メーカー。原料から製造工程に至るまで作り手の顔がはっきりと見え、安全で安心な商品を提供することを方針とし、モノづくりを行う。
山梨県南アルプス市桃園924