FACTORY
ゴム加工品メーカーの多い福岡県久留米市。ここに本社・工場を置く「株式会社ムーンスター」は、1873年(明治6年)に創業。140年以上の歴史を持つ老舗の靴メーカーです。ヤフードーム1個分程度の広さを持つムーンスターの工場。屋上に出ると、工場のノコギリ屋根の連なりを眺めることができます。昭和37年〜38年の全盛期には、1万人を超える人々が働いていた、正に、地元の誇る製造メーカーです。現在、工場では500名程度の人が働いています。昔と比べ規模が小さくなったとは言え、機械の部品を修理製造する部門や、靴の金型を作る鋳造部門など、様々なものづくりの現場が揃った職人集団であることに変わりはありません。
創業者の倉田雲平氏が職人として立ち上げた「つちや足袋」がムーンスターのルーツ。夫婦二人で、手縫いで足袋を仕立てていました。その後、明治27年にドイツ製のミシンを導入すると、家内工業から工場生産へと舵をきり、現在の場所に工場を建設しました。大正時代に入ると、アメリカのシンガーミシンの社員が持参したスニーカーにヒントを得て、足袋の裏にゴムを付けた“ゴム底の地下足袋”を商品化。これがスニーカーの原型です。久留米市に、ゴム加工品メーカーが多数存在するのは、このゴム底の地下足袋を製造する過程で、ゴムの輸入が盛んに行なわれたからだそうです。
生ゴムに硫黄を加えて、熱反応によりゴムのソールとアッパー(生地の部分)を接着させるヴァルカナイズ製法(加硫)。縫製など一通りの加工を終えたスニーカーを並べると、大きな釜に入れて約1時間。釜の中は120℃程度に熱せられ気圧が加えられます。スニーカーの素材や季節によっても、釜の温度や時間を変えなければならないため、とても手間もかかります。たとえ小ロットの製品であってもかかる手間は同様です。そのため、この製法を取り入れている国内工場はごくわずか。それでも、生地とゴムが一体化するこの製法でつくったスニーカーは、ソールがしなやかで丈夫。精巧で壊れにくい製品づくりのために守るべき製法なのです。ゴムの配合から調整するという“加硫のレシピ”は、長年の経験が積み重ねてきた宝となっています。
世界中で通じるようにと採用されたムーンスターの“月と星”のマーク。その願いの通り、子どもたちの上履きから紳士靴、婦人靴と、たくさんの人の足元でムーンスターは愛されています。「履く身になって作りましょう」と、工場内に掲げられたまっすぐな言葉を表すように、膨大な足型のデータを集め長年研究を重ねているムーンスター。研究、企画、デザイン、そして工場での製造。すべての工程に溢れている、職人たちの高い意識と技術。精巧な手作業の繋がりでつくられるムーンスターの製品には、創業当時に掲げていた、一人ひとりのお客様のためのもの作り、“御誂向御好次第(おあつらえむきおこのみしだい)”という創業者の想いがしっかりと息づいています。
1873年(明治6年)より座敷たびの生産に開始、その後ドイツ製ミシンを導入し初めてたび製造の機械化による大量生産を開始する。以来140年にわたり靴の製造を行う。
“すべての人々の「笑顔」と「しあわせ」のために”を経営理念に、現在では数社となった「ヴァルカナイズ製法」で丈夫でフィットする国産スニーカーの製造を行う。
2006年(平成18年)、商号を月星化成株式会社から株式会社ムーンスターへ商号を変更。