FACTORY
昭和34年(1959年)設立以来、ワンピースやジャケット、ブラウス、スカートなどオールジャンルの高級婦人服作りに取り組んできました。東京の足立区と千葉香取市に工場を構え、別々のラインを持つことで、さまざまなブランド製品作りに対応できるようにしています。平均年齢は30代と、工場としては若いと思います。約30名の職人とともに、ブランドからの細かな要望に応えながら、ものづくりに励んでいます。
私たちの工場の強みは、やはり「職人たちの縫製技術の高さ」です。加えて、「東京に工場がある」というのも実は大きなメリット。
まず「縫製技術」について。例えば「メローロック」を見ていただきたいですね。生地の端がほつれてこないようにミシンで始末することを「ロック」と呼びますが、私たちが得意とするのは、このロック始末の中でも「メローロック」。通常のロック始末よりも幅が狭く、縫い上げるのは簡単ではありません。ですが、マーヤの職人はいとも簡単に1枚の生地を縫い上げます。「Factelier by MARYA」として初めて作った「シルキーサテンストレッチブラウス」もこのメローロックが魅力のひとつ。メローロックをかけることで、縫い幅が細く糸が美しく並ぶので、洋服のドレープ(波打ち)がとてもきれいに出ます。
Factelier by MARYAのシルキーサテンストレッチブラウスは「フリーサイズ」で展開しています。フリーサイズのブラウスですが、どんな体形の方でもシルエットやドレープが美しく出るように何度も試作を繰り返しました。この写真のマネキン(トルソー)をご覧いただきたいんですが、それぞれのマネキンはサイズが異なり、右から7号、9号、11号です。サイズが違うマネキンに同じブラウスを着用させていますが、どのマネキンでもドレープが美しく出ていることがお分かりいただけると思います。つまり、一般的な9号をフリーサイズとして展開しているのではなく、“どんな体形”の方でも美しく着こなせるからこそ“フリー”サイズとして製作しました
メローロックをはじめとしたミシンテクニックによって、洋服に“上品な表情”を付加させられることが、マーヤならではの強み。高級婦人服には欠かせないこの縫製方法を高度に扱える職人がたくさんいるおかげで、有名ブランドからも商品の仕上がりに評価をいただいています。
また、東京に工場があることで、“人件費などのコストが高いのでは?”とよく聞かれます。たしかに、マクロで見るとデメリットのように思うかもしれませんが、それを補って余りある大きなメリットがあります。ファッションブランドの多くが都内でデザインを描いたりパターンを引いたりしていますので、東京に工場があることでデザイナーさんと顔を合わせての打ち合わせがスムースにできるんです。デザイナーやパタンナーの想いを縫製に詰め込むうえで、彼ら彼女らとのコミュニケーションをしっかり取ることはとても重要。その点をブランドのみなさんも感じてくれて、オーダーをいただけていると思います。もちろん、物理的にアパレル企業との距離が近いので、納品やサンプルのお届けがしやすいこともメリットですね。
縫製技術の高さと地の利を生かして、これからもクオリティが高くそして想いを込めたものづくりに励むことで、マーヤへの信頼をさらに高め、“メイドインジャパン”ではなく”メイドインマーヤ”と呼ばれるようになりたいですね。
「関東三大師」の一つに数えられ、お正月には初詣の参拝客で賑わう「西新井大師」のほど近くに私たちは工場を構え、創業からこの地でものづくりに勤しんできました。実は社名の「マーヤ」と、ここ西新井大師は密接な関係があります。50年ほど前の創業時、初代社長が西新井大師の神主に社名の命名をお願いしました。神主さんもその名前に迷う中、ヒントになったのがお釈迦様の“お母さん”の名前。その名前こそ「マヤ」です。当時から工場に女性が多かったため、先代はこの言葉を気に入り、語呂を良くするために伸ばし棒を入れ「マーヤ」となりました。当時、西新井大師の神主さんがカタカナの名前をつけたのは初めてだったそうです。
この地と社名に強い関係があるからこそ、ここでものづくりができることを誇りに思いますし、「マーヤ」の名をしっかりと受け継いでいきたいと思います。
(現在の工場長で、次の代を継ぐ予定の菅谷 正さんは)私がアパレルの販売員をしていたころは、お客様から「ありがとう」と言われることが多かったですが、工場で働くと洋服を着用してくださるお客様自身の声を聞く機会が減ってしまいました。やはりお客様からの声を聞くことでモチベーションUPや“さらに技術力を付けよう”という想いが職人に芽生えるので、いまの仕組みを変えていきたいと思っています。工場や職人にスポットライトが当たるように自主的に行動していきたい。ファクトリエさんとの取り組みも、自分たちで商品を考え「マーヤ」という社名を商品のタグに記すことで、マーヤの存在を直接伝える活動ですし、お客様の声を職人に届けるひとつのアクションだと思っています。
縫製担当・神山かえでさん(職人歴3年)。ベテラン技能士から技術継承し、入社4年目という若さで東京工場の「縫製班長」に抜擢された彼女。彼女のような若いメンバーも巻き込みながら、お客様との接点をもっと増やしていきたい。
加えて、現在は製品作りだけではなく、SNSでの発信やほかの工場の若手グループ、青年部などで情報交換をして新しい取り組みも始めました。また、都心から近いということで、工場見学も受け付けており、もっと多くの方々に「マーヤ」を知っていただけるよう努力していきます。
これからのマーヤの活動をぜひ楽しみにしてください。
取材同行を通して一番心に残ったことは、社長、奥様、工場長である息子さん、そして今回の取材にはいらっしゃらなかったお嬢様を含めたご家族の仲の良さです。その雰囲気は工場全体に浸透していて、社長や奥様、工場長が社員さんに接しているときの温度感がまるで家族なんです。
年配社員のお孫さんのこととか、若手の方の生活状況とか、皆さんの家庭環境を熟知されていて、そこに対する気遣いが本当にすごいと思いました。ミシンは機械ですが、それを操るのは人。同じ機械を使っていても、人の想いが洋服に現れるのですね
1959年創業。ワンピース、ジャケット、ボトム、ブラウスなどオールアイテムの生産が可能な高級婦人服工場。都内に工場を持つ立地条件を生かして、ブランドとの緊密な連携をしながら高品質でオリジナリティの高いアイテムを生み出している。東京足立区と千葉に工場があり、月産で約2,000枚を生産する、日本を代表する縫製工場
東京都足立区椿2-8-5