FACTORY

石川県かほく市に拠点を構える「カジレーネ株式会社」は、1950年創業の合成繊維加工のエキスパート。
世界のトップブランドも認める、超極細ナイロン繊維の加工において、日本の繊維技術の粋を体現する工場です。
まっすぐの糸に、空気感と伸縮性を宿らせるこの技術は、ファッションの未来を支える世界的工場です。

1950年の創業以来、カジレーネは一貫して合成繊維加工の最前線を歩んできました。
仮撚加工を中心に、撚糸や複合加工などを手がける中で、時代のニーズに応える技術革新を繰り返してきました。
現在は170名のスタッフが働き、伝統と革新が共存する現場では、未来の繊維産業を担う挑戦が続いています。
この工場が特別なのは、「世界で一番軽いナイロン織物を作る」「世界で一番細い加工糸を作る」という高い目標を掲げているところ。
その実現を支えているのが、カジグループの原点である「カジ製作所」の存在です。
もともと機械メーカーとしてスタートしたカジ製作所の技術が、糸の加工機や織機、編機をカスタムする力に生かされています。市販の設備では再現できない高品質を支える秘密は、ここにあります。

ファクトリエがカジレーネとの連携を決めたのは、その“糸のチカラ”に魅了されたから。
見た目だけでなく、着心地や動きやすさ、音や風合いまで計算された糸は、プロダクトの完成度を何段階も引き上げます。
まさに、目には見えない部分こそがブランドの信頼を支えているのです。
糸の品質は、生地にしたときにはっきりと現れます。たった一本の異常が、全体の印象を変えてしまうこともあるからです。
そこでカジレーネでは、糸の太さや膨らみを均一に保つための加工とチェックを徹底しています。
たとえば、「染めテスト」もそのひとつ。
仮撚(かりより)によって膨らんだ糸を染めてみて、濃淡がないか、重さにムラがないかを確認することで、生地になったときのバラつきを防いでいます。
合成繊維は「フィラメント長繊維」と呼ばれ、一本の糸の中に非常に細い繊維が束になっている構造です。
仮撚りによって物理的なストレスが加わると、このフィラメントが切れて毛羽になり、生地表面に影響を与えることがあります。
この「毛羽」が出ると、つるっとしたナイロンのはずが、まるでピーチスキンのような質感になってしまう。
そこで、出荷前には専用の検査で毛羽の有無を細かくチェックしています。

私たちが普段身につけている服。
その素材にナイロンやポリエステルなどの合成繊維が使われているのはご存知かと思いますが、実は「ただの糸」ではありません。
カジレーネでは、先ほど少しお伝えした仮撚(かりより)という名前の特殊な加工糸を作っています。
元はつるつるの釣り糸のような状態の糸に、仮撚(かりより)工程を加えることで、ふんわりとした膨らみやストレッチ性、保温性が生まれます。これが、アウトドアウェアにも使われるような機能的な糸に変わる秘密です。
ポリエステルやナイロンなどの繊維に熱と撚りを与え、撚りを戻すことで、柔らかな風合いや絶妙な光沢を生み出します。なかでも7デシテックスという驚異的な細さのナイロン糸への加工は、職人の技術と設備が結集して初めて実現する芸術とも言える仕事です。

2025年4月10日に石川県かほく市に開業した「KAJI FACTORY PARK」は、カジグループが70億円以上を投じた産業観光施設。
日本最大級の体験型ファクトリーとして、最新織機160台が稼働する生産工場の見学や、ブランド旗艦店、レストラン、ワークショップ、オリーブガーデンなどを備え、繊維産業の“集う場”として作られました。
梶政隆代表はこう語ります。
「日本の繊維産業はまだまだ可能性に満ちている。テキスタイルをイノベーションの起点にしたい」と。
異業種との連携、オープンファクトリー、新素材の開発── そのすべてが、100年先を見据えた「挑戦の糸」。
変化を恐れず、新たな価値を編み続けています。

合成繊維加工の専門企業として、仮撚技術を軸に、世界基準の精密な加工糸を生み出すカジレーネ。石川の気候と職人技が織りなす糸は、ファッションの未来をやさしく、力強く支えています。
石川県金沢市梅田町ハ48番地