ハシモト

FACTORY

「神経質になりすぎじゃない?」と自問するほど厳しい目でバッグと向き合う工場「ハシモト」

日本の一大バッグ産地・兵庫県の豊岡市。鞄作りの起源は奈良時代にまでさかのぼり、大正時代以降はその伝統的な技術や流通網をベースに、一気にバッグ生産の街へと発展を遂げました。

世界的デザイナーズブランドも手掛ける職人集団

現在では、特許庁から承認を受けた地域ブランド「豊岡鞄」を展開するまでに至り、日本のみならず世界から高い信頼を得ている、日本が誇るべきバッグ産地。それが豊岡です。

そんな豊岡にて1963年に創業し、約60年にわたり妥協ない丁寧なものづくりで多くのバッグブランドから信頼を得ているのが「株式会社ハシモト」。総勢50名の職人が、世界的デザイナーズブランドをはじめ、誰もが一度は聞いたことがあるあらゆるブランドのOEM(他ブランド受託生産)を手掛けています。

革を扱う技術を絶やしてはいけない

「私が1978年に入社して、かれこれ40年ちょっとが過ぎましたね。もう還暦になりましたしね(笑)」と笑顔で語るのは、代表の橋本和則さん。

ハシモトの2代目として陣頭指揮をとる和則さんですが、ナイロン素材を中心とするOEMのバッグ作りに真摯に取り組む一方で、2017年ごろからひとつの想いがふつふつと高まってきたそう。

「今(2021年)から20年くらい前までは、革の製品をかなり作っていましたが、徐々に減ってきて、現在では会社の中で絶滅危惧種のような存在になってきました。ただ、(ファクトリエの)山田さんや岩佐さんにご覧いただいたように、工場内にはまだ革を扱える機械や技術も残っていて、このまま眠らせるのはもったいないと思うようになったんです」

革を扱う技術を絶やしてはいけない。そんな想いで2017年に立ち上げたのが自社ブランド「ottorossi(オットロッシ)」。但馬弁で「驚いた」を意味する「おーっとろっしゃ」から名付けられたこのバッグブランドを通して、技術の継承を始めました。

未経験の販売は大きなチャレンジ
それでも挑戦しない選択肢はない

非常にきめが細かくなめらかで柔らか。そして発色がとても美しい、イタリア産の革を使った目を引くバッグ。一目見て“こだわりぬかれた逸品”とわかるこのバッグを手に取りながら、和則さんの弟で生産管理を担当している橋本浩さんが続けます。

「自社ブランドを始めることはハシモトにとって大きなチャレンジ。特に未経験の販売にも力を注がなければいけない。それはものづくりだけをやってきた我々にとっては大きな変化です。しかし、“依頼されたものはできるだけ断らない”という“チャレンジ精神”でこれまで60年やってきましたので、そこに挑戦しないという選択肢はなかったですね」

メンズバッグ中心のハシモト
レディース向けへの挑戦

さらに、ファクトリエとの提携もハシモトにとってひとつの“チャレンジだ”と語る浩さん。

「これまではOEMも含めてメンズバッグ作りが中心。しかし今回はあえてファクトリエの“女性”のお客様に我々のバッグを届けることを決めました。ファクトリエのみなさんの意見・アドバイスも頂きながら、自分たちの可能性を広げたいという想いです。今回作ったバッグは、女性らしい曲線美とエレガントさ、そして機能性を兼ね備えた自信作ができましたよ!」

見た目の美しさは革がいいから、だけじゃない

ファクトリエとタッグを組み2021年に初めて販売を開始したのが、「バイカラーバケットバッグ」。商品名の通り表側と内側の革のカラーが異なり、ワクワクする美しさがあります。

ただ、このバッグが醸し出す“気品”は革の美しさだけで成しえているものではありません。ボディ(側面)の革がくたっとなりすぎず、まっすぐにもなりすぎない絶妙に描かれた曲線。この曲線があるからこそ、華やかさがぐっと高まっているんです。

「この絶妙な曲線を生み出すために、表革に貼り合わせる芯材選びは非常にこだわりました。加えて、その厚みも試行錯誤を凝らしました。既存の芯材をそのまま使うのではなく、加工までしっかり加えて仕上げたんですよ。硬くなりすぎても女性らしさが失われるし、柔らかすぎると自立しない。その微妙な塩梅を追求しました」と語る浩さん。

間髪入れずに社長の和則さんが続けます。

自分たちでも神経質になりすぎかな?
と思うくらいに手を抜かない。いや抜けない

「例えば、裏地と表の革をくっつけるときでも、しっかり仮止めをします。仮止めせずに見た目をきれいに仕上げることはできる。でも、使っている間に生地が抜けてしまったりするんです。つまり、手を抜いて作ると結局使い手であるお客様にしわ寄せがくる。そういったことが起きないように手間をかけてでもやってますね。『ハシモトの工場自慢は何ですか?』とたまに聞かれて回答に困ることがありますが、『自分たちでも神経質になりすぎじゃないかな?と思うくらいに、手を抜かずに妥協せずに作っていること』なんだと思います」

常に検品も厳しくチェックしていて、非常に細かく見るんだそう。加えて生産の途中にも検品を入れる徹底ぶり。

ステッチはまっすぐ縫えばいいものではない

そして今回は、バッグを縫う糸を革と同系色にするのではなく、あえて目立つ「ホワイト」に。この背景を聞くとデザイン性だけでなく、「これぞハシモトのきめ細やかさの象徴」ともいえる理由が隠されていました。

「ホワイトにしたのは少しだけポップさやカジュアルさを付け加えたかったからですが、特に私はステッチの“美しさ”にこだわりがあって。バッグの大きさに対してステッチ(ミシン目)の間隔が広すぎるとどうも気になったり、これは私の感性ではありますが、一番美しく映えるステッチをつい追求したくなりまして(笑)」(浩さん)

ただ縫うだけではなく、美しさを厳しい目で追い求める。「神経質になりすぎることがハシモトらしさ」という言葉に通ずるものを感じます。

なるべく断らないから難しい案件がくる
だからこそ戦い続けられる

最後に、これからのバッグ作りについて語ってくれました。

「バッグ作りでは、ずっと同じものを作ることがありません。作り方も常に変わっていきます。つまりそれは、ものづくりには終着点がないということです。縫い方も変わっていくので、絶えず新しいことを考えていかないといけない」(浩さん)

どれだけ難しいバッグ作りをブランドから依頼されても、なるべく断らないようにしているというハシモト。その裏には、常に変化するバッグ作りの未来を見据え、常にチャレンジする姿勢がありました。

「なるべく断らないようにしてるので、最終的にハシモトに難しい案件が回ってくることも多いんですけどね!」という和則さんの言葉で、一同笑顔に(笑)。

実直にものづくりに向き合う職人集団「ハシモト」の名前が刻まれたバッグ。このバッグを手に取ると、きっと毎日が笑顔にあふれ、楽しくなるはずです。

株式会社ハシモト

世界的デザイナーズブランドをはじめ、多くの国内外ブランドのバッグ作りを手掛ける工場。革やナイロン素材などあらゆるバッグを手掛け、「難しい依頼でもまずは挑戦する」というその姿勢と卓越した技術により、多くのブランドから信頼を得ている。

兵庫県豊岡市正法寺633-1