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森下メリヤス特集ページ

常識外の掛け算から生まれた
“偶然の産物”

今回製作した“超高密度ジップアップパーカー”は、カジュアルな印象を与える一般的なパーカーとは一線を画します。プロジェクトが始動した当初から「テーラードジャケットのような品格を持ったパーカーを作るために、生地の密度を高める」という意図はありましたが、ここまでの生地を実現できたのは私たちとしても想定外でした。この“偶然の産物”はどのようにして出来上がったのか。3ヶ月に及んだ開発の裏側を、担当者の話を交えながら振り返ります。

世界の著名ブランドから
引く手あまたの『森下メリヤス』

今回タッグを組んだ工場は、日本屈指のニット産地・和歌山県で110年の歴史を誇る『森下メリヤス』。1900年ごろにスイスで製造されたニッティングマシンから最先端の編み機まで、実に200台以上の機械を保有しています。

『森下メリヤス』の特徴は、提案機能を備えた製造販売型メーカーとして、独自素材の開発に力を入れていること。有りものではない、独自性を持った生地をクリエイトしています。世界最高峰のテキスタイルの見本市としてパリで年2回開催されている「プルミエール・ヴィジョン」に出展した際には、著名なラグジュアリーブランドからも注目を集め、取引へと発展したブランドも多数。今では、売上高の4分の1を輸出が占めるまで海外事業が成長しています。

世の中にない生地を作り続ける

「宿題を毎回もらっているような感じでしょうか」と語るのは、今回のプロジェクトで『森下メリヤス』側の旗頭となった長尾さん。長尾さんはこれまでのキャリアの中であらゆる国々の生地に触れ、世界レベルの技術力を肌で体感されてきました。世界で戦うためには、技術的なクオリティはもちろん、オリジナリティのある発想を持たなければならない。その志向は『森下メリヤス』というフィールドで存分に活かされており、ジャージを織物のように仕上げた生地をはじめ、既成概念に捉われない発想を大切にしていらっしゃいます。

「説明書がないものを試行錯誤しながら作っています。でも、それが楽しい。ブランドの担当者や着用するお客様をあっと言わせたいんですよ」と、茶目っ気たっぷりに語る長尾さん。実験的な企画は製造者泣かせの一面もありますが、『森下メリヤス』に限っては、それは当てはまりません。

「工場長も職人もアグレッシブなんですよ。難しいオーダーであっても、まずはやってみようと前向きに捉えてくれます」。ブランド側のデザイナーやMDから提案されたアイデアに自分たちの解釈を加え、どこにもない生地を工場一丸となって作り出す。今回のプロジェクトでも、そのスタンスが大きなカギを握りました。

光明をもたらした
イレギュラーな手法

品格を出すためにまず考えたのが、風合いを損なわずに生地の密度を高めること。そこで採用したのが、本来は光沢を出すという目的で行う“シルケット加工”です。生地の良さを活かしながら密度を高められることに加え、編み目が整うという副次的な効果によって美しさも与えたいという意図がありました。

この試みは成功しましたが、ファクトリエのMDが発した一言がプロジェクトに拍車をかけます。「密度をもっと高めたい」。ここから森下メリヤスとのさらなる試行錯誤がはじまりました。有力なアイデアとして持ち上がったのが、“タンブラー加工”で生地を縮ませること。しかし、密度は高まるものの、生地に対する負担や色褪せなどの問題が懸念となり、あえなく却下となりました。

検証を繰り返す中、1つの方法が光明をもたらします。私たちが行き着いたのは、“シルケット加工”にプラスして、生地に圧力をかける“カレンダー加工”を行うという手法。生地を直接プレスすることでハリとコシが生まれ、テーマとして掲げていた「テーラードジャケットのような品格」を表現することができました。

「他の手法だとこうはならなかった。この生地ができたのはたまたまだと思います」と長尾さんは回想します。確かに偶然性も介在していますが、一流ブランドのニーズに応える中で多くのノウハウを蓄積し、無理難題を宿題として捉える『森下メリヤス』とのタッグであったことを思うと、この製品の誕生は必然だったようにも感じられるのです。

素材、加工、縫製といった一つひとつの要素は珍しいものではありませんが、常識にとらわれない掛け算を行うことで生まれた“超高密度ジップアップパーカー”。従来のパーカーでは実現できない一味違ったコーディネートを、様々なシーンで楽しんでください。